小日向文世はなぜあんな演技ができるのか

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長い下積み生活を経て、47歳でブレイク
誰も真似ができない現代最高の「脇役」を解剖

柔和な顔立ちでおどけたと思いきや、同じ表情で身も凍るほどの冷徹な台詞を吐く。出演作の数だけ、この多面的な善人顔は観る者を魅了してきた。とらえどころのないバイプレーヤーの本性に迫る。

同じ笑顔のはずなのに

 6月に最終回を迎えたリーガルドラマ『イチケイのカラス』(フジ系)には、大反響を呼んだ小日向文世(67歳)の演技がある。

 ある殺人事件で、藤代という男が「自分が犯人だ」と供述する。ところが、捜査が進展していくと真犯人は被害者の子供だとわかる。罪を背負うことで藤代は、かつて自分の命を救った被害者の妻に恩返しをしようとしていたのだ。藤代に対して、小日向演じる裁判官は穏やかな笑みを湛えてこう語る。



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