講談社 本田靖春ノンフィクション賞 発表と選評

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令和6年度(第46回)

今回の受賞作は、ルポルタージュ、伝記、体験記などのノンフィクション作品で、単行本、新聞、雑誌などに、昨年4月1日より本年3月末日までに発表されたものから選ばれました。選考委員は赤坂真理・魚住昭・後藤正治・最相葉月・原武史の5氏(五十音順)です。

 本年度の候補作品は受賞作品のほか、春日太一『鬼の筆 戦後最大の脚本家・橋本忍の栄光と挫折』(文藝春秋)、木寺一孝『正義の行方』(講談社)、乗京真知『中村哲さん殺害事件 実行犯の「遺言」』(朝日新聞出版)、森合正範『怪物に出会った日 井上尚弥と闘うということ』(講談社)でした(著者五十音順)。

受賞作品
『ラジオと戦争 放送人たちの「報国」』
(NHK出版刊)
大森淳郎 NHK放送文化研究所

大森氏 受賞のことば

 この本を書いている最中の2022年3月14日、ロシア国営放送のニュース番組の放送中に、マリーナ・オフシャンニコワさんという職員がスタジオになだれ込み、キャスターの背後で抗議のプラカードを掲げるという事件が起こりました。プラカードには「プロパガンダを信じないで」「この人たちは嘘をついている」と書かれていました。彼女の命がけの行動は世界中の人々を驚かせたし、私も感銘を受けた一人です。でも私は、オフシャンニコワさんよりも、むしろその前で何事も起こっていないかのように、能面のような表情でニュースを読み続けるキャスターにより強い印象を受けたのです。私が書き続けていたのは、オフシャンニコワさんのような英雄的な人物の話ではなく、国民に「嘘をついている」側にいた、NHKの大先輩たちの話だったからです。感動的な物語にはなりようもなく、地味で気が滅入るような話にならざるを得ません。そういう本が、このような大きな賞をいただくことになり、喜びよりも驚きが勝っています。



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