あの日のごちそうさま 6皿目 阿川佐和子さん
連載 | 2024.02.20 |
阿川家のコロッケと本気の鰹節ごはん
廊下を走って
母がこしらえた食事を、台無しにしてしまった痛恨の記憶があります。米国留学から帰国した両親と、広島の親戚にあずけられていた兄と私が一緒に暮らし始めた神奈川県二宮の家でのこと。3歳の私は外を走り回ってばかりの娘で、ある日外から帰ると、長い廊下の先にある台所の床で母が新聞紙を広げて、パン粉に覆われた俵型のかたまりを並べていた。それが何なのか一目で悟った私は「私もやるー」と走り始めました。でも長い廊下で加速がついた自分を止められずに新聞紙の上に突進。そのほとんどがつぶれてしまいました。阿川家名物の牛ひき肉入りクリームコロッケです。
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