[本格ノンフィクション連載]ゼットの人びと [最終回]さらば、伝説の技術者たち

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トヨタ「特命エンジニア」の肖像

技術の粋を集めた新型スープラに、世界は熱狂した。だがそれは、ひとつの時代の終わりを象徴してもいた。トヨタの未来、自動車の未来は――。未曽有の変革期に、エンジニアたちはもがいている。

清武英利(ノンフィクション作家)

前回までのあらすじ/トヨタの中枢部署「Z」でチーフエンジニアを務める多田哲哉は、スバルと共同でスポーツカー「86」を完成させた後、BMWと共同で伝説の「スープラ」復活に挑む。定年を目前にした多田は、信頼する部下・野田の出向や、高価な車体価格をめぐる上層部との駆け引きなどを経て新型スープラを完成させる。

ポルシェに勝った!

 デジタル表示の競り値はぐんぐん吊り上がり、広い会場の一角で多田哲哉は凝然と立ちすくんでいた。



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