[本格ノンフィクション連載]ゼットの人びと 第33回 「ラスト・カイブツ」誕生

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トヨタ「特命エンジニア」の肖像

EV、ハイブリッドでなければ車にあらず。そんな風潮が世界を覆う中、「最後の高性能ガソリン・スポーツカー」がベールを脱いだ。自動車はただの道具ではない。スープラは技術者の誇りの結晶なのだ。

清武英利(ノンフィクション作家)

前回までのあらすじ/トヨタの中枢部署「Z」でチーフエンジニアを務める多田哲哉は、スバルとの共同でスポーツカー「86」を完成させ、BMWとの共同で伝説の「スープラ」復活に取り組んでいた。定年を目前にした多田は、開発を何とか軌道に乗せる。しかし待っていたのは、信頼する部下・野田の子会社出向だった。

よくぞ、ここまで

 野田利明は職場からいなくなって、その価値がわかるような技術者だった。

――後釜はすぐに見つかるだろう。



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