[本格ノンフィクション連載]ゼットの人びと 第26回 前途多難な「日独共同戦線」
社会 | 2021.08.10 |
トヨタ「特命エンジニア」の肖像
世界に冠たる「トヨタウェイ」も、巨大な自動車会社のようなこの国では、遠い東洋の異文化にすぎない。「チーフエンジニア」の何たるかさえ、わかってもらえない。これは、えらいことになった。
清武英利(ノンフィクション作家)
世界に冠たる「トヨタウェイ」も、巨大な自動車会社のようなこの国では、遠い東洋の異文化にすぎない。「チーフエンジニア」の何たるかさえ、わかってもらえない。これは、えらいことになった。
清武英利(ノンフィクション作家)
前回までのあらすじ/トヨタの中枢部署「Z」でチーフエンジニアを務める多田哲哉は、富士重工業(現・スバル)との共同で、2012年春に新型スポーツカー「86」を完成させた。多田は国内外を飛び回り、ネットも駆使したプロモーションに奔走する。そんな中、今度は「BMWとのスポーツカー共同開発」という新たな任務が下った。
ドイツとは哲学が違う
その言葉を浴びて、多田哲哉の自信のようなものが砕け散った。
BMW本社、通称「フォー・シリンダービル」の会議室で、BMWの技術陣と議論していたときのことである。BMWはスポーツカーの代名詞であるFR(後輪駆動)の車づくりが得意で、直列六気筒エンジンを持っている。
BMW本社、通称「フォー・シリンダービル」の会議室で、BMWの技術陣と議論していたときのことである。BMWはスポーツカーの代名詞であるFR(後輪駆動)の車づくりが得意で、直列六気筒エンジンを持っている。
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