[五輪特別読み物]阿部一二三・詩の兄は、なぜ柔道をやめたのか

[ptitle]
阿部勇一朗という生き方 ――「天才のきょうだい」の苦悩を考える

ぼくは「天才」ではなかったけれど

東京五輪で日本中を沸かせた阿部兄妹には、誰よりも近くで活躍を見続けてきた長兄が存在する。きょうだいへの複雑な思いを持ちながら歩んできたその半生を、本人が初めて打ち明けた。

二人兄弟だと思われて

「詩(うた)の表彰式が始まった時、急に一二三(ひふみ)からビデオ通話がかかってきたんです。一二三の顔が映ってから、表彰台の上に立つ詩へと画面が切り替わりました。その間、言葉がなくても伝わるとばかりに、僕たちに会話はありませんでした。通話の終わり際に僕が一言『おめでとう』と声をかけると一二三は微笑んでいました」

 こう語るのは阿部一二三・詩兄妹の兄・勇一朗さん(25歳)だ。



会員の方は