[本格ノンフィクション連載]ゼットの人びと 第12回 コードネームはハチロク
社会 | 2021.03.18 |
トヨタ「特命エンジニア」の肖像
その数字には、トヨタのスポーツカーを象徴する特別な意味が込められている。他のどれとも違う、楽しいクルマを作りたい。エンジニアたちの情熱は、ハチロクという名を得てさらに加速してゆく。
清武英利(ノンフィクション作家)
その数字には、トヨタのスポーツカーを象徴する特別な意味が込められている。他のどれとも違う、楽しいクルマを作りたい。エンジニアたちの情熱は、ハチロクという名を得てさらに加速してゆく。
清武英利(ノンフィクション作家)
前回までのあらすじ/トヨタの中枢部署「Z」でチーフエンジニアを務める多田哲哉は'07年1月、スポーツカー開発の特命を言い渡された。名車「ハチロク」の系譜を引くクルマの開発に乗り出した多田だったが、採算をとる妙案が浮かばない。行き詰まった多田は、マツダでスポーツカー開発を続ける技術者・貴島孝雄に教えを乞う。
部下の企み
「番号は取ってきたのか?」
多田哲哉が部下をにらんだ。トヨタ自動車の技術本館六階、大部屋の車両企画部の一角である。
「いやあ」。声をかけられた今井孝範は、「いま忙しいんで」と言い訳をして、なかなか腰を上げなかった。
多田哲哉が部下をにらんだ。トヨタ自動車の技術本館六階、大部屋の車両企画部の一角である。
「いやあ」。声をかけられた今井孝範は、「いま忙しいんで」と言い訳をして、なかなか腰を上げなかった。
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