[経済ドキュメント]そして鉄も自動車も家電もなくなる ――日本は何で生きていくのか

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10年後に待ち受ける荒涼と空洞

戦後日本をグイグイと引っ張り、何百万、何千万もの国民を食わせてきた基幹産業が見る影もない。時代は流れ、「日本製」の文字から往時の輝きはとうに失われた。現場ではいったい、何が起きているのか。

火が消え、人が消えた

「ねえちゃん、いいちこもう一杯くれんか!」

 汗と油で顔を光らせた男たちが、煤(すす)けた作業着姿で大声をあげる。1600℃の高温で大量の鉄鉱石を溶かし、月に数百万トンの鉄を錬成する「高炉」の周辺は、気温50℃にも達する。三交代制で働く彼らは、仕事が終わると昼夜となく街の角打ちに繰り出し、イワシを糠(ぬか)味噌で炊いた塩辛い「ぬかだき」を肴に焼酎を呷(あお)るのだった――。



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