[特別読み物]テレサ・テンと藤圭子がいま生きてくれていたら

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『空港』に『時の流れに身をまかせ』、
『新宿の女』に『圭子の夢は夜ひらく』
――深い業と憂いを感じさせる二人の歌声に、心を鷲づかみにされた

人生の鬱屈すべてを込めたような凄みのある声色。その歌には恐ろしささえ感じた。だが聞く者が絶望の淵に沈んだ時、彼女たちの歌は何よりもの味方となった。命を削り出して生きた二人の物語。

絶望の中で消えていった

 それは、あまりに強烈で悲しい光だった。'70年代から'80年代にかけて、日本人は二人の歌手に取り憑かれた。

 テレサ・テンと藤圭子。彼女たちの歌声は、底知れない業を漂わせていた。その行き場のない憂いに、聞く者は惹きつけられた。

 二人には共通点がある。歌手人生で深い傷を負い、絶望の中で非業の死を遂げている。



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