なりもの ヤフー・井上雅博伝 第25回 去り際の美学/森 功

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大型連載
祖師谷団地が生んだインターネットの天才

井上雅博は単なる「起業家」ではなく、インターネットという産業を興した「産業家」だった。だが、走り続けた果てに自らの限界を悟ってしまう。無力感を打ち消すように趣味の世界に溺れていく。

森 功(ノンフィクション作家)

前回まで/これまで井上がヤフー社長を退任した理由は、「モバイル対応への限界」と囁かれてきた。だが、その背後には、情報の紹介から、独自のコンテンツ制作へと舵を切って失敗した、米ヤフーの存在があった。

「僕には自信がない」

「テクノロジーだったら、僕でもまだやっていけるかもしれない。けれど、メディア企業としてやっていく自信はない」

 二〇〇〇年代後半、米ヤフー・インクが自社制作の情報や番組を提供するメディア企業に転身しようとデータマイニングの部署をつくったとき、井上雅博はヤフー・ジャパンの社員を前にそう言った。データマイニングとはビッグデータの分析を意味する。そこから現在のAI(人工知能)による種々のデータ解析時代を迎える。



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