なりもの ヤフー・井上雅博伝 第6回 よく遊び、決して群れるな/森 功

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大型連載
日本のインターネット産業を作った男

一九六〇年代、巨人軍の帽子を被り、ウルトラQに熱狂する子供たちの中に「なりもの」の姿があった。幼き日の井上少年はいかに育ったのか。半世紀前の東京・祖師谷の街にタイムスリップする。

森 功(ノンフィクション作家)

前回まで/'17年4月にクラシックカーレースで事故死した、事実上のヤフージャパン創業社長・井上雅博。彼は東京・世田谷の祖師谷団地で生まれ育ったことを、会社内ではほとんど話していなかった。

SFと手塚治虫で育った

 井上雅博の実母和子は、かつて一家が暮らした東京都営の祖師谷団地を離れ、都内の住宅街でひとり暮らしている。そこを訪ねた。

「あの子はごく普通に育ったので、とくに話すことなんてありません。試験前に朝まで勉強していることもよくありましたから、勉強は得意だったかもしれません。でも決して天才だなんて思いません。団地で遊ぶ普通の子です」



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