なりもの ヤフー・井上雅博伝 第3回 「腹心」なくして、トップなし/森 功

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大型連載
日本のインターネット産業を作った男

九〇年代半ば、名だたるIT企業の買収に血道をあげていた孫正義は、なぜ二人の大学院生が始めたガレージカンパニーに目をつけたのか。背後には、腹心だった「なりもの」の後押しがあった。

森 功(ノンフィクション作家)

前回まで/'17年4月にクラシックカーレースで事故死した、事実上のヤフージャパン創業社長である井上雅博。彼の「お別れの会」には、孫正義やヤフー・インク創業者のジェリー・ヤンら多くの著名人が詰めかけた。

単なる主従関係ではない

「ねぇこの会社、どう思う?」

「いいと思います」

 米ヤフー・インクに対するソフトバンクの出資は、二人のやりとりで即決された。念を押すまでもなく、一人は孫正義、もう一人が井上雅博である。新たなビジネスに挑戦する際、迷った孫が問いかけ、井上が自信をもって答える。ときとして井上は反対する場合もあったが、このケースでは間違いなく孫の背中を押した。



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