トッカイ――バブルの「しんがり」たち 第11回 阪和銀行と「奪り駒」の悲哀

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闇に溶けたカネを回収する男たちの闘いを描く
話題沸騰のヒューマン・ノンフィクション連載

中坊公平の時代は終わりを告げる。だが、破綻した住専や金融機関の社員を「取り立て」に使う手法は、変わらない。奪(と)られた「駒」たちは、母体行の客たちのもとに、回収へ重い足を運んだ。

清武英利(ノンフィクション作家)

前回まで/旧住専や銀行などから借りたまま、隠匿されている資金の「追跡」を続けるのが、「整理回収機構」特別回収部、通称トッカイだ。男たちは、中坊公平社長の直轄組織として、大口・悪質不良債権の回収を行っていた。

中坊公平の嗚咽

 中坊公平はその日、和歌山支店の鳳(おおとり)分室にやってきて、

「『国策会社』という言葉を何で使わへんねん」

 と、約10人の役職者を叱り飛ばした。彼は整理回収機構の社長を、70歳の誕生日の1999年8月2日に退任すると発表しており、前年暮れからこの年の5月ごろまで地方の回収拠点を回っていた。その最中に大阪府堺市に置いた鳳分室で、中坊は怒り出したのだった。鳳分室が債務者に出す督促の文書に「国策会社」の文字を入れていなかった、と咎めたのである。



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