短期集中連載 栄光の代償といま向かい合う プロ野球「戦力外通告」の男たち 第2回 流転の日々

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名前を聞いてピンとくるプロ野球選手などほんの一握りだ。誰にも知られることなくプロを去る者は数知れない。小野剛の場合は海を渡る厳しい道を選んだ。球界にほんの爪痕だけでも残したくて。

ライター 赤坂英一

ひとりぼっちの投球練習

 24歳で巨人から戦力外通告を受けた2002年の冬、小野剛(ごう)は東京の自宅を引き払い、妻の郷里・茨城県鹿嶋市へ居を移した。生後2ヵ月の長男も一緒である。だが、女房の実家に居候するわけにもいかず、築50年以上もたつ木造平屋建ての陋屋(ろうおく)を月1万円の家賃で借りた。夜、壁や窓から刺すような隙間風が吹き込み、布団から顔を出して寝ていたら、あまりの冷たさに目が覚めるほどだった。


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