曽野綾子・独占手記「夫・三浦朱門を自宅で介護することになって」性格の変化は、認知症の初期の症状だった

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そのとき、私は覚悟を決めたのです

いまや「自宅で介護を受けたい」と望む高齢者は半数近い。しかし、肉親にとってはそれなりの心の準備が必要だ。夫90歳、妻84歳――老年と向き合ってきた作家が、初めて語った在宅介護生活。

「僕は幸せだ。ありがとう」

 夫は二〇一五年の春頃から、様々な機能障害を見せるようになった。内臓も一応正常。ガンもない。高血圧も糖尿病もない。私と違ってすたすた長距離を歩く人であった。しかしその頃から時々、すとんと倒れるようになった。その度に頭を打ってこぶを作り、顔面に青痣(あおあざ)を作った。もっともその頃は、「この痣ですか? 女房に殴られたんです」と嬉しそうに言えるほどに普通だったが、次第に寡黙になって来た。今でもテレビを見ながら痛烈な皮肉を言うことはあるが、恐らく性格の変化は認知症の初期の表れだったのであろう。


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