週現『熱討スタジアム』第127回 NHK朝ドラの金字塔 『おしん』を語ろう 今週のディープ・ピープル 小林綾子×小林千洋×岩切徹

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平均視聴率なんと52.6%
日本人の2人に1人が彼女の健気さに涙した

山形の寒村に生まれたヒロインが日本中を泣きに泣かせた。貧しくても下を向かずに生き抜く少女が、カネでは買えない大切なものがあることを教えてくれた。

貧しくても家族がいた

小林綾子(以下・小林綾):私が少女編の主役を演じさせていただいた連続テレビ小説『おしん』の放送から、ちょうど30年が過ぎました。

小林千洋(以下・小林千):時の流れは早い。'83年4月からの1年間でしたね。おしんの10歳までが綾子さんで、16歳から45歳までが田中裕子さん。その後を乙羽信子さん(故人)が演じられた。

 脚本を執筆された橋田壽賀子先生は明治、大正、昭和を生きたヒロイン・おしんの姿を追うことによって、日本の近代史も見つめ直そうとしたんです。

岩切:ええ。このドラマは単におしんの苦労と成功の物語ではなく、日本が近代化を成し遂げる代わりに捨ててしまったものを描いた作品でした。苦労や我慢の美徳、あるいは家族の強い結び付きなど……。

 世間はバブル前夜。「ジャパン・アズ・ナンバーワン」などとおだてられて、浮かれていましたが、そこへ橋田さんは日本人に失われていたものを突きつけた。



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