[巨弾ノンフィクション]丹波哲郎は二度死ぬ 第4回 岩下志麻と共演した『智恵子抄』に秘められた真実

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大スターはなぜ晩年に「大霊界」へ傾倒したのか

33歳の若さで脊髄性小児麻痺を患った最愛の妻・貞子。丹波にとって、彼女の存在は「太陽」のようだった。半世紀近くも連れ立った妻と死別した喪失感は、丹波を死後の世界へと誘っていった。

野村進(ノンフィクションライター)

 役作りは人に見せない

 岩下志麻は、1997(平成9)年春、ハワイの空港のロビーで、ばったり丹波哲郎に出くわした。

「丹波さぁ〜ん!」

「おお、志麻子!」

 ふたりは外国人同士のように"ハグ"をし、異国での奇遇を喜び合った。

 丹波は岩下をいつも「志麻子」と呼んだ。「志麻」なのに、丹波だけはなぜか「子」をつけて「志麻子」と言う。



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