[特別読み物]1988年 南海・門田博光が「不惑の奇跡」を起こすまで

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孤高の大打者が、球団最後の年に見せた意地

閑古鳥が鳴く球場で、淡々とホームランを打ち続けるこの男にはそこはかとない哀愁が漂っていた。「孤高のスラッガー」は、18年間所属した球団がなくなったこの年、寂しさを胸にフルスイングした。

電車で通う男

 南海ホークスの門田博光は、近鉄電車に揺られていた。

「車の運転で集中力を奪われたくない」と、ホームの大阪球場で試合があるときは、奈良の自宅から、球場がある難波まで電車通勤をするのが、門田の日常だった。南海では紛れもないチームの顔だったが、電車内で門田に声をかける者はいない。170㎝、81㎏のずんぐりむっくりとした体型に、少し禿げ上がってきている額。見た目はどこにでもいる中年男だった。



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