[本格ノンフィクション新連載]ゼットの人びと 第2回「技術者の城」の夢と憂鬱

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大反響!

トヨタ「特命エンジニア」の肖像

伝説のクルマ復活、その使命を帯びた男の挑戦

その大半を、日本最大の企業トヨタが所有する町がある。精鋭エンジニアが寝食も忘れて仕事に没頭するこの場所で、男はいつしか夢を見失いかけていた。「スポーツカーは儲からない」と言われ続けて。

清武英利(ノンフィクション作家)

第1回のあらすじ/三菱自動車を経てトヨタに中途入社したエンジニア・多田哲哉は、製品企画を担う中核部署「Z」でチーフエンジニアとして活躍、ミニバンなど数々のヒット製品を生み出した。しかし「スポーツカーを作りたい」という夢を捨てきれない多田は、人知れず葛藤していた。そんな彼がある日、常務から呼び出される。

撮影禁止の「トヨタ町」

「白い巨塔」と呼ばれる部署が、トヨタ自動車にはある。

 もともとは、国立大学医学部をモデルにした山崎豊子の長編小説のタイトルで、進歩的に見えながら特殊な組織の壁に覆われた非情な医局を意味していたのだが、トヨタでは技術部と、彼らが入る技術本館のことを指している。事務系の社員が理屈っぽいエンジニア集団を皮肉交じりに言うことが多い。



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