「後輩に追い抜かれるとき」を思う

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藤井聡太 棋聖へ

いつか必ずやってくるそのとき、
人の真価は問われる

それはあまりにあっけない一瞬の出来事だ。今までは歯牙にもかけなかった年下に敗れ、立場が逆転してしまう。屈辱的な敗北を拒絶するのか、受け入れるのか。人生の土壇場で誰もが岐路に立たされる。

プライドはずたずたに

「負けました」

 その瞬間、渡辺明二冠(36歳)は絞り出すような声で投了した。

 最後の数分間、何度も虚空を眺めては、しきりに首をかしげた。一体、どこで何を間違ったのだろう。現実として迫る敗北を前に、途方に暮れているようにも見えた。



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