井上陽水の名盤『氷の世界』を聞き直してみよう

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『あかずの踏切り』『帰れない二人』
『心もよう』『小春おばさん』
……日本初のミリオンセラーは、なぜここまで心を打つのか

'73年、陽水が発表した『氷の世界』は、アルバム1枚を通してどこを切り取っても隙がなかった。圧倒的な質の高さで、まさに「完璧な作品」。このレコードによって、陽水は一気に頂点へと登りつめた。

一度聞いたら抜け出せない

「あのアルバムを初めて聞いたのは、10代前半の頃です。わざと白飛びさせたような色合いのジャケットには、椅子に座りギターをつま弾く陽水さんが写し出されていました。その佇まいが渋くて、本当に恰好良かった。

 ジャケットからレコードを取り出して針を落とした瞬間、それまで耳にしたことのない音の世界に呑み込まれました。

 アルバムに入った13曲、37分42秒が、ひとつの壮大な物語のように繋がり合っていました。僕は、レコードから発されるエネルギーに圧倒されてしまったんです」



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