なりもの ヤフー・井上雅博伝 第20回 道楽を極める/森 功

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大型連載
祖師谷団地が生んだインターネットの天才

箱根の総工費三〇億円の別荘に、西麻布のプライベートレストラン。巨万の富を築いた井上は次々と自身の夢を具現化していく。「団地の子」はけた外れの趣味の世界で何を目指していたのか。

森 功(ノンフィクション作家)

前回まで/世田谷の団地生まれの、事実上のヤフー・ジャパン創業社長、井上雅博。「ヤフーBB」「ボーダフォン買収」という難事業を乗り越えながら、その間、井上は箱根・仙石原に巨大な別荘を建築していた。

指紋認証型のワインセラー

 井上雅博は、三〇〇〇坪を優に超えるその広遠な原野を一目見て、すぐに気に入った。神奈川県足柄下郡箱根町仙石原字イタリ……。

 箱根山は大正から昭和にかけ、堤康次郎と五島慶太がリゾート開発に乗り出した。西武鉄道と東急電鉄という二大私鉄グループの総帥が、箱根の外輪山に臨む景勝地を巡って覇権を競った。その土地開発は、「ピストル堤と強盗慶太の決戦」と語り継がれる。



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