なりもの ヤフー・井上雅博伝 第14回 「カネ遣い」に哲学を持て/森 功

[ptitle]
大型連載
祖師谷団地が生んだインターネットの天才

産声をあげたばかりのヤフーの歩みは、まだ心許ないものだった。井上はカネを絞るところは絞り、費やすべきところにはとことんつぎ込むことで、日本独自のインターネットサービスを築いていった。

森 功(ノンフィクション作家)

前回まで/世田谷の団地で生まれた、事実上のヤフー・ジャパン創業社長の井上雅博。ヤフー・ジャパンを始めた井上は、「年商3000億円」という目標達成のため、無名の「ならずもの」たちを集めていった。

急成長の立て役者たち

 現在のヤフー・ジャパンの年間売り上げは、九〇〇〇億円を超える。むろん以前のように広告収入だけではないが、事業規模は七〇〇〇億円の受信料を誇るNHKをはじめ、新聞各社やテレビ各局の名だたる大メディアをはるかに凌いでいる。

 そのヤフー・ジャパンの広告収入を下支えしているのが、ページビュー(ウェブサイトの閲覧回数)だ。たいていのウェブサイトの運営企業は、ひと月あたり一億を超えれば赤字を免れ、ひとまず安堵する。だが、ヤフー・ジャパンのそれは、桁違いの七五〇億ページビューを数える。インターネット業界のガリバーと呼ばれる所以が、そこにある。



会員の方は