なりもの ヤフー・井上雅博伝 第7回 真面目さだけでは足りない/森 功

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大型連載
祖師谷団地が生んだインターネットの英雄

日本が右肩上がりの成長を続ける時代に、世田谷の団地で育った「なりもの」。イデオロギーに染まることなく、趣味や遊びに熱中するうち、後に巨大企業を作り上げた彼の原型が出来上がっていった。

森 功(ノンフィクション作家)

前回まで/'17年4月にカリフォルニアのクラシックカーレースで事故死した、事実上のヤフージャパン創業社長・井上雅博。井上は1957年に東京・世田谷の祖師谷団地で生まれ、地元の小学校、中学校へと進んだ。

あの井上君が社長!?

 読書や音楽好きの目立たない少年が、日本のインターネット産業の幕を開けるほどの経営者になりあがった。本人も認めるように、その原点は都営のマンモス団地にある。井上雅博が通った祖師谷小は、みのもんたや田村正和、坂本龍一といった卒業生もいた。平凡なサラリーマンから個性ある映画人まで、多種多様な人々が住んだ一九六〇年代の祖師谷は、ある種、移り行く日本の縮図のようでもあった。



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