トッカイ――バブルの「しんがり」たち 第10回 イトマン事件と情実融資の「古傷」

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闇に溶けたカネを回収する男たちの闘いを描く
話題沸騰のヒューマン・ノンフィクション連載

回収の前線に立つのは、旧住専の出身者だけでなく、破綻したさまざまな金融機関の職員も多数含まれた。依拠する組織を失った男たちは、過去の傷を癒やしながら、さらに過酷な闘いを強いられる。

清武英利(ノンフィクション作家)

前回まで/旧住専や銀行などから借りたまま、隠匿されている資金の「追跡」を続けるのが、「整理回収機構」特別回収部、通称トッカイだ。男たちは、中坊公平社長の直轄組織として、大口・悪質の不良債権の回収を開始した。

再就職面接での「告白」

 大阪府東大阪市にあった「信用組合大阪弘容」が、「大阪庶民信用組合(現のぞみ信用組合)」に吸収されることになったのは、1998年9月のことである。全国の金融機関がバタバタと倒れ、大阪府が信組再編を急いでいた時期だったし、隣の和歌山ではその夏、毒カレー事件で4人も殺され耳目を集めていたから、小さな信組の消滅に注目する人はあまりいなかった。

 その千里丘支店長だった大下(おおしも)昌弘は、大阪弘容の事業譲渡が終わった翌年、再就職を目指して2社の面接試験を受けた。まだ46歳である。



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