トッカイ――バブルの「しんがり」たち 第8回 元警部と「ミナミの帝王」

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闇に溶けたカネを回収する男たちの闘いを描く
話題沸騰のヒューマン・ノンフィクション連載

トッカイの行動には危険が伴う。万一の時には、「特別対策部」の社員が帯同していた。検察や刑事出身者の集団だ。彼らもまた、苦い過去を嚙みしめながら、ゴールの見えない闘いに加わっていた。

清武英利(ノンフィクション作家)

前回まで/旧住専や銀行などから借りたまま、隠匿されている資金の「追跡」を続けるのが、「整理回収機構」特別回収部、通称トッカイだ。林正寛らは、この社長直轄組織に配属され、大口・悪質の不良債権の回収を開始した。

別世界の男

 空は崩れる前の均衡を保っていた。水を含んだ灰色の雲の下で、整理回収機構の大阪特別回収部――通称「トッカイ」の面々は身を固くしている。暴力団風の男たちに占拠されたビルが、目の前に迫っていた。



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