「5年前の開幕投手」はバッピになって 元巨人・東野峻の静かなる「退場」

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プロ野球感動読み物

「いかに抑えるか」ではなく「いかに打たせるか」。かつての巨人のエースは、以前と180度違う「バッティングピッチャー」という仕事の難しさに思い悩んだ。腕がちぎれるまで投げ続けた男の軌跡。

天国と地獄

 6月のある日、横浜スタジアム。試合前の横浜DeNAベイスターズの打撃練習中のことだった。

 マウンドに立つ「背番号112」のバッティングピッチャーがボールを投げようとした瞬間、顔をしかめる。指に引っかかったボールはベースの遥か手前でワンバウンドした。その後、何事もなかったように投げ続け、自分の出番を終えたピッチャーはマウンドを降り、迷わずトレーナールームに向かう。緊張が解けた瞬間、冷や汗の出るような激痛が走る。周囲の誰ひとりとして気がつかなかったが、このとき彼の肩は致命的なダメージを負っていた――。


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